Barclay James Harvest2010/12/30 01:36

 今年最後の一枚は、超メジャーからイギリスの「Barclay James Harvest」、1971年発表の三作目「And Other Short Stories」。
メンバーはギターのJohn Lees、ベースのLes Holroyd、ドラムのMel Pritchard、キーボードのStuart Wolstenholmeの4人。
ドラム以外の3人はヴォーカルも担当し、そのハーモニーが何とも美しい。
オーケストラをバックにした叙情的なシンフォ・フォークロックで、俗にいうプログレとは少し違うが、いかにもイギリスって感じの何とも癒される一枚で、これがなかなか。

1曲目「Medicine Man」、のっけから売りのオーケストラを前面に叙情的で壮大な雰囲気の佳作。もう少し曲が長くてもいいような気が。
2曲目「Someone There You Know」、バラードっぽく始まるのだがすぐに盛り上がり、途中変拍子を織り交ぜながら、更には美しいヴォーカルとハーモニー、ボリュームペダルで味付けされたギターが何ともいえない雰囲気を醸し出す。傑作の曲だと思うのだが、1曲目同様に短い。この雰囲気で10分くらい引っ張ってもらいたかった・・・、と思うのは自分だけだろうか。
3曲目「Harry's Song」、リズムは単調ながらも注目はベースライン。これが結構かっこいい!
4曲目「Ursula(The Swansea Song )」、アコギから始まる完全なフォークロック。メジャーからマイナーに転調するあたりはありがちか。
5曲目「Little Lapwing」、一聴アメリカのカントリーっぽい曲だが、後半少し引っ張るあたりは、それなりの主張なのかと。
等と最後の9曲目 「After The Day」、テーマは核戦争。これまでとは一転、非常に重い1曲である。爆弾が爆発して終わる衝撃的なエンディング。それまでの癒しが壊されるある意味、名曲?である。

全体的にポップであるが、聞き流してもよし、聞き入るもよしの我的に名盤の一枚!

Stackridge2010/09/29 23:32

 最近になって、やっと涼しくなり、そんな事で自分的に秋らしい一枚を。
よく田舎のビートルズと比喩?揶揄?されるイギリスの「Stackridge」。1976年発表の5枚目「Mr. Mick」。
プログレファンの間では「Stackridge」は「プログレにあらず」と言われ、更にはこの「Mr. Mick」は、Stackridgeファンからも過去アルバムに比べ人気が低い。
思うに、ポップ色とプログレ色を均等に併せ持つが故に、中途半端に感じられてしまうのではないかと。
しかし、自分的には非常に完成度が高く、最高傑作と言ってもいい程大好きなアルバムである。
田舎もののせいか、歳のせいか、なんか落ち着くのよね〜。
特に2曲目のインスト「Breakfast With Werner von Braun」はず〜っと流していたい1曲。
更には次の3曲目「Steam Radio Song」はドラム、ベース、ギター、ヴォーカルのアレンジ、バランスが絶妙の名曲!

等々、どんな人に薦めていいのか分からない名盤、迷盤?って事で。

Curved Air2010/08/25 16:15

 久しぶりに一般的にいうプログレ?を紹介。

イギリスの「Curved Air」、1973年発表の4作目「Air Cut」。
以前紹介した「Renaissance」と比較されることも多い女性ヴォーカルグループである。

前作からヴォーカルの「Sonja Kristina」以外メンバーを総入れ替え。いわば第二期Curved Airの一作目である。注目は、後に「U.K.」等で活躍するヴァイオリン、キーボードの「Eddie Jobson」。当時、弱冠18歳。前メンバーのヴァイオリン「Darryl Way」と比較しても、決して引けを取らない存在感は恐るべし「少年」である。

内容は1曲目「The Purple Speed Queen」。いかにもアルバムの1曲目といった感じで、ジャーン!って感じのインパクトのあるポップロック。キーボードソロの後にギターソロとありがちな曲構成だが、誰にでも楽しめる曲としては名曲か。
で、このアルバムの一番お薦め曲は10分半の大作3曲目「Metamorphosis」。ピアノの前奏から入り少しクラシカルな感じも、途中変拍子を絡め静かに盛り上がっていくところはプログレファンにはたまらない1曲。「Eddie Jobson」の力量を伺える名曲である。

第一期と好みが分かれるところだが、プログレの入門編としてはこちらがお薦め。

Soft Machine2010/07/19 05:37

 たまには超有名どころを。

以前、GONGを紹介した時にチラッと触れたイギリスのカンタベリー・ジャズロックの重鎮「Soft Machine」。
といえばやはり1970年発表の3作目「THIRD」。
ギターのDaevid Allenが脱退後のアルバム。よってギターは無くメロディーはサックスとキーボードで受け持つのだが、これがこのアルバムを良い方向にもって行ったのかもしれない。
正直、一番最初に聞いた時のとっつきにくさと来たらこの上なく、傑作という一般的批評を理解するまで少し時間がかかった。
なにせLPの時代、2枚組で18分〜19分の曲が4曲、って事は片面1曲ずつ。これを通して聴くには当初非常に体力が必要で、途中でくじけたことも2度、3度。

そんなアルバムの内容は、
1曲目「Facelift」。その頭約6分が前衛的というかフリージャズというか曲ではない電子音がうねってるだけ。しかし、その後ジワジワとメロディーが流れ始め、これがかっこいい!この約6分を飛ばさずに聞けるかどうかで、その後の感動を迎えられるかが決まる気が。
この1曲目をクリアできれば残りの3曲は非常に楽しく聴けること間違いなし。
2曲目「Slightly All The Time」。ややスローな入りから、やはり6分を過ぎたあたりから急展開。同じフレーズの繰り返しを効果的に使い、半ばトランス状態まで持って行ってしまう程の力強さ。しかし、その一歩手前で再びスローになり我に返してくれる。作曲はオルガンのMike Ratledge。
3曲目「Moon In June」。歌ものなのだが、やっぱり普通じゃない。いま日本で流れている音楽に慣れている人は唄が下手なことも相俟って悪酔いする事間違いなし。ドラムのRobert Wyattらしいユーモアたっぷりの曲である。後半のHugh Hopperの歪んだベースが、前半とは全く別の曲に思える程かっこいい。
4曲目「Out-Bloody-Rageous」、自分の中ではカンタベリー史に燦然と輝く名曲中の名曲かと。1曲目同様、オルガンがホニャホニャと静か〜に入ってきて「来るぞ、来るぞ・・・来た−!」とその瞬間鳥肌。後はその鳥肌を保ちつつ中盤まで走る。途中ブレークを入れつつ、また走り出し最後はスローダウン。曲が終わった後、余韻に浸りながら5分間身動きとれず。作曲は2曲目と同じくMike Ratledge。この人の曲はいいっすね。

噛めば噛む程味が出るスルメ的アルバム、我的ベスト10に入ること間違いなしの傑作である。

Fairport Convention2010/07/11 01:40

 前回グループ名を出したのでせっかっくだから。

「Fairport Convention」1969年発表の2nd、「What We Did On Our Holidays」。
Sandy Denny初参加アルバムである。
Fairport Conventionと言えば、4thのLiege & Liefが一般的に傑作として知られているが、あえてここでは2ndを。
理由は、このアルバム1曲目のタイトルが前回紹介したグループ「Fotheringay」と同名だから。どういう繋がりがあるかは定かではないが意味深げな感じがして気になる・・・。ただそれだけ(失礼)。

そんな1曲目「Fotheringay」の曲調は、翳り+切なさ十分でしんみりと。これぞSandyのフォークソングといった感じの名曲!
かと思えば2曲目の「Mr. Lacey」はコテコテのブルースロック。しかし、しゃがれ声ではなくSandyの美声で暑苦しさが軽減されている感じ。ブルースロック好きの方には違和感を感じずにはいられない1曲・・・か?
3曲目の「Book Song」はのんびりとしたフォークロックでハモリがキレイな癒される佳作。
等々、以降はフォーク基調の曲を中心に、中近東風な曲などもありバラエティな全12曲。
アルバム全体としての纏まりは今ひとつな感があり、Sandy Dennyが加入したことによりどういう方向に向かうかみんなして模索してるってところか。

Fairport Conventionを深く知りたい方にはお薦めって事で。

Fotheringay2010/07/05 23:07

 イギリスのフォークロック・グループ「Fotheringay」の1970年発表のセルフタイトル唯一作品。
イギリスのフォークロックを語る上で絶対に押さえておかなければならない伝説の女性シンガー「Sandy Denny」がFairport Conventionを一時脱退後に作ったグループである。
しかし、資金的な行き詰まりからアルバムを一枚残し解散。
その後ソロ活動、The Strawbs、Led Zeppelinにゲスト参加等々引く手数多の人気ぶり。
1973年にFairport Conventionに復帰するが翌年いろいろあり再び脱退。
後にもソロとして活動するが1978年不慮の事故により31歳の若さで突然の他界。非常に残念である。

さてアルバムの内容はといえば、これが「いい!」の一言。
Sandy Dennyのヴォーカルもさることながら、バックの演奏がFairport Convention、ソロの頃より自分好み。
決してSandy Denny中心のバックバンドではなく、Fotheringayというバンドとして全体にバランスがとれ纏まりを感じさせる。
特に1曲目の「Nothing More」の翳り感と格好良さは名曲!

フォークロック好きの方には是非お薦めの1枚!

Illusion2010/05/29 01:09

 前回グループ名を出したので、せっかくだから紹介。

イギリスのグループ「Illusion」。
第一期「Renaissance」のメンバーが中心となって作ったグループである。
しかし、1st発表前にリーダー的存在のKeith Relfが練習中に感電死。
追悼の意を込めたであろう作品となった1stをその翌年1977年に発表。
そしてこの2作目を1978年に発表し、これがセルフタイトルとなっている。

内容は、第一期「Renaissance」の曲調を継承しつつも1stよりほんの少しハードな部分もあるが、バラードは更に熟成された感じもあり、聴いていて非常に落ち着く。
ヴォーカル「Jane Relf」がいいのは当たり前なのだが、それとこの2ndはリードギター「John Knightsbridge」の音が1stより前に出ているが、これが非常にいい!
1曲目の「Madonna Blue」終盤の長〜いギターソロでフェードアウトするあたりは一見ありがちな感じだが、いつまでも聴いていたくなる様なこんな音は意外に少ない。一般的なギターソロに比べても非常に長いのだが、全然長く感じられず、逆に短く感じる程である。
そして3曲目「Louis' Theme」、4曲目「Wings Across The Sea」の翳りは、このアルバムを象徴する名曲かと。

第二期以降の「Renaissance」とは反する方向性の翳りたっぷりの正統派ブリティッシュ・フォークプログレ。
その極みとして是非聴いていただきたい1枚である。